ぱけちゃん、おしゃまなの。

ふざけながらも世間を切るんだ、はてなブロブ版

早番挽歌’94

早番…。
それはシフト表のオイラの名前の欄に存在しただけでめまいがしてくる恐怖の大王である。
が、しかし…。
こうも毎日毎日嫌がらせだと思うのだが早番が連続してくると慣れてしまうのだよな。で、オイラが奴隷のように使われているグループホームでの早番の仕事。
朝7時に出勤。
ただし、夜勤明けなのに朝食を作り終え、いろんな方のおむつ交換、着脱衣を介助しながら、しかも足腰が不安定なのに自分の強い意志であちらこちらに行ってしまうご老人が倒れないように見守らなくてはならない職員のことを考えると、自然と30分くらい前に到着してしまう。ここを巧みについて夜勤のシフトは日勤者がやって来る8時まで孤立無援に「わざと」している。だから早番のオイラはやって来る。…ボランティアタイムと呼んでいる由縁である。
…ちなみにオイラ以外で早番勤務をしている他の職員は皆無と言って等しいけどな。
で、夜勤明けさんレスキュー隊よろしく颯爽とホームになだれ込むオイラは、冷静に手をきれいに洗い、挨拶を交わし、まず食事介助をしている夜勤明けさんを見守りつつ皿洗いを黙々とする。皿洗い自体はすぐに終わってしまうのだけれど、夜勤明けさんが他の行為の介助、トイレ介助に行くためにホールが空っぽになる時は、オイラが見守りをしていなければならない。だからちっとも仕事ははかどらない。
ヒイコラ言いながら皿洗いが終わると、基本的にユニット内の清掃になるのだけれど、すべての入居者が同じ時間に朝食を食べるわけではないので、食事されている方が終了するまで掃除が出来ない。よって、昼飯の下ごしらえをする。
だいたいはサラダとか漬け物とか、冷たくても良いものだ。…一応人の心のあるオイラは、温かいものを先に作ってしまい冷たくなった頃に提供するほど鬼ではない。
で、主婦なら誰もが憧れる対面式キッチンで、朝のニュースを見つつ、且つ食事介助をしている職員と軽い会話などをしたりする。
特にオイラは、25歳の気の良い若い兄ちゃんとコンビを組む日が大好きである。手を休めることなく彼に向かって、くだらないことばかりを話しかけ笑わせようとする。…オイラ、この時が凄く幸せなんだ。
さながらかつてのアメリカの料理ショーの主人公になった気分だ。今は通販番組で良くやっているようなヤツだな。…あれって楽しいぞ。
最後の人が食い終わると掃除に移る。いつもいつも、
「どうせすぐ汚されるんだから、汚い場所を中心にやればいいや…」
と思いながら一生懸命やっちまう…。バカだなオイラ。
床の雑巾掛けが終わる頃には、今の季節汗ダクダクである。雑巾掛けダイエットだ。その後は、トイレ掃除である。
…老人が住む場所のトイレ掃除は難しい。計画的に掃除をしていても、途中で乱入されてしまうのでちっとのはかどらない。しかも下痢とかされると最初から掃除もやり直し…。やーれやれ。
この頃には、夜勤明けさんも一通りボランティアタイムを消化し、日勤さんに引継を行い帰る。まったくお疲れ様である。
さ、掃除が終わると昼飯を作り始めなければならない。昼飯というのは結構手間がかかって面倒なのである。ま、1ヶ月も仕事の度に(23日間)飯作りをすれば慣れちまうけどな。11時くらいにはだいたいの形が出来て、後は食器に盛りながら使用した鍋やらを洗い、乾燥させる。
その後は、自分の作った飯を何の因果か食いながら、食事介助をするのである。…今なら二人羽織させたら最強だよ?


昼食の皿洗いは、知らずに湧いてきた遅番の仕事なので、オイラは風呂に湯を張って、適正な温度にうめ、濡れても大丈夫な格好に着替え、一時的に職場をバックレてタバコを吹かす。
なお管理者曰く、
「休憩はユニットの中で過ごすものです」
と言うことらしい。…それって休めないジャンね。なのでバックレと呼ぶ。
1時頃から入浴介助をはじめる。
自分の意志をハッキリと表明できて、座ることも問題ない人はそれほど苦痛ではない。…暑いことは暑いけどな。
大変なのは、入浴介助用の車いすを使う人だったり、ギリギリ歩行が可能な方だ。車いすは最初から終わりまで、全部介助するのである意味、その人の好みがわかれば手順に従ってやっていくだけである。車いすから入浴用の車いすに移乗してもらう時だけ、ちょいと疲れる。
かなり大変なのは、湯船に足を運べない人で、毎回どんちゃん騒ぎである。先日などはご老人の足に風呂の栓が絡まって、オイラにしがみつくもんだから栓を直すことも出来ず、出る頃にはお湯がないよー、状態だったもんな。
ご老人もグッタリしているし…。
あ、聞くまでもないがオイラは更にグッタリしてる。
これを2〜3人行う。
出ると風呂を掃除して、消毒して回る。MRSAとかあるからな。要注意だ。
で、呑気に介助が殆ど必要のない軽い認知症の方と雑談をしている管理者を尻目に、オイラは自分の意志を表現できなかったりする重傷の認知症の方におやつの食事介助を行う。
4時にはボランティアタイムなどせずとっとと帰る。
オイラのポリシーとして、スタッフがいなくなると入居者が不穏になることがあると勉強したことがあるので、自然に消えるようにしている。
それがわからない管理者は
「挨拶が足りない」
と文句を言うけどな。ま、説明してもわからないだろうから適当に流している。
家に帰ったらボロボロさ。
…また明日早番だからな。と思うと夕方7時くらいには寝てしまう。もちろん板の床の上でな。