ぱけちゃん、おしゃまなの。

ふざけながらも世間を切るんだ、はてなブロブ版

体からオーラが出て、オーロラの黄色い人はアントニオ猪木

「家猫ヤムさん、2008」

猫又、よやよや。「徒然草(上)第89段 より」


君は17歳。
オイラが大学進学で名古屋に行った後に、実家にやってきたシャム系の雑種で雄だ。
オイラは猫アレルギーだったため、家で猫を飼えなかったのだけれど、
進学で家を出たとたんに母さんが猫を飼いだした。・・・ま、動物嫌いの親父は反対したらしいが、妹の賛成とこんなオイラでも家から居なくなって寂しかったのかもしれない。
話に聞くところでは、君は家に着た頃大変なやんちゃモノだったらしい。
動くモノを見れば飛びかかるし、ジャンプを重ねて洗濯物にぶら下がって遊んでいたり。
それは見ているモノをはらはらさせながらも愛嬌たっぷりたった。
そんな君の指定席は床から1m80cmくらいある食器棚の上だった。
視線を指定席に向けて一転に据え、軽く洗濯機に飛び上がり、そして冷蔵庫に飛び移り、最後に指定席に到着する。
そこから君は一日中飽きることなく、下界を見下ろして、眠そうにゆっくりしていた。
たまにオイラが帰省で帰ってくると、君は何の警戒もなくオイラにすり寄ってくれたし、おもちゃで一緒に遊んでくれた。
噂では君は知らない人が来ると押入の隅に逃げ込んで出てこないという話だったのだが、家にはオイラのにおいも残っていたのかもしれない。
・・・あるいはどんな動物や、子供にもなつかれてしまうと言う割と迷惑なオイラの特性のせいかもしれないが。
もちろんアレルギーは治っていないので、君と遊んでいたり、一緒の空間にいる度に喘息はひどくなり、
オイラは吸入の薬を飲まないと死にそうになったよ。
しかしながら、オイラは君のことを決して疎ましく思ったことはない。
なぜなら喘息を起こすのはオイラの体質のせいであって、君の責任じゃないからね。
なにより一緒にじゃれるように遊ぶのが楽しかったし・・・。
ま、君の場合ちょくちょく限度を通り越して、爪で名誉の負傷を与えてくれたのだけど。
・・・全然恨んでないよ。


オイラが30を超える頃になると君は少し白内障になってきた。
それでも、目の前で猫じゃらしのごときおもちゃを振り振りとちらつかせると、野生のライオンのように、すくと体をすくめて飛びかかるスタンバイをして、ほんの刹那、オイラが大きくおもちゃを動かす瞬間をねらい澄ませて綺麗なダッシュで的確におもちゃを足で押さえつけ、かじるのだ。
・・・ま、たまに勢い余ってオイラに体当たりをかますのはご愛敬な。


オイラが35になる頃。君は初めてやってきた家ではなく、不慣れな別の家に家族と引っ越したね。
毎週、妹に連れられて病院へ行き、何本も注射を打たれるような生活になった。
そして、しなやかにモノからモノへ飛び移る姿は見られなくなった。君の指定席はスッカリほこりをかぶって、待っているのだけどね。

でも、足腰が弱くなり、やせてきた君にはかつての指定席は酷かもしれない。
今は、電気カーペットの暖かい場所や、ストーブの前が指定席だな。ま、気持ちよさそうに寝そべっているからそれはそれで良いのだろう。


老いていく姿を見届けていくというのは、ある種の苦痛を感じてしまうモノだけれど、それでもやはりしなやかな体と柔らかい毛をなでていると体の暖かさが手に伝わり、和んだ表情を見せる君に大変心がいやされるのだ。


臆病者の君は、外を散歩することがないまま一生を終えることになりそうだけれど、それは君の一生なのでとやかく言われる筋合いではないね。居心地の良い家が良いなら、そのままゆっくりすればよい。
幸い、仕事とか片づけは全く最低レベルの我が妹も、君にかける愛情だけは世界一だからもうしばらく、せめて猫又に成れるくらいの年齢までがんばって長生きして欲しい。 
「猫目w」